去年の入試論文。一年経ったし、もう時効ってことでいいかしら…というわけでアップしてみました。今回はまんが・アニメ・ゲームなどからの引用はありません。
ちょっと前の文章なので見苦しい点、未熟な表現・論がありますが、目を瞑ってやって下さい…。
続きからどうぞ。
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【はじめに】龍になる蛇
龍、といえば、その姿が目に浮かばない、という人はいないだろう。
妖怪という日本が生んだ百鬼夜行の世界は文明開化と共に消えていったが、この空想上の生き物は、現代になってもその姿が廃れることはなかった。それは、“龍”というものが、世界――大きくいえば人類に――深くから根付いた生き物だからである。
龍の存在が文字、口承によって伝えられ始めたのは古代文明の時代にまで遡る。中国、メソポタミア、オリエント、ギリシア、その古代から存在が確認されている。そしてその原型となった存在もまた、古代から人間と関わり合いのある生き物――すなわち蛇、である。西洋の絵画等の中では、その姿は蛇というよりトカゲを連想させる描写であったりもするが、これは意外にも、古代文明が龍という生き物を表現してから、ずっと後に付け加えられた表現描写である。(この理由については、後ほど触れる)
龍というのは、簡単にいえば、蛇を神格化した生物である。そして蛇を神として奉ることを、古くから“蛇信仰”という。この信仰は“原始信仰”と呼ばれるほど古くからあり、先ほども述べたように、その歴史は古代まで遡ることができる。しかも、この蛇に対する人類の認識というのは、世界共通であるといってもよい。それはつまり、人が興す集落や国、その文明の傍らには、常に蛇がいたということになる。
人が生きる場としての文明が興すには、その土地に安定した(ないしそれに近い)水場がある、という条件が不可欠となる。しかしそれは人類だけでなく、他の生き物にしても同様であり――水場を求めるという意味合いにおいて――湿気を好む蛇もまた例外ではない。水に近い文明ほど――例えばナイル川にエジプトや、黄河の中国。日本なら島国であるがゆえに――蛇に敏感だったといえる。
では“龍”とは、蛇がどのようにして“龍”になったのか。本文では、その理由と、“龍”の変化の意味を追って行く。
【一】蛇の身体が現すもの
・脱皮の表わすもの
古代から始まり、蛇が象徴する多くは生命にまつわるものがほとんどである。脱皮して成長して行く姿は、“不死”を連想させ、またその不死が“無限”なるものを連想させた。※2脱皮前の蛇は目が白濁とし、皮膚が乾き、変色する。そして食欲が落ちて動きが鈍くなるなど、瀕死の動物を思わせるものがある。それが新たなる体になるとなれば、古代の人類にとっては計り知れない、永遠を予見させる驚異の存在だっただろう。ゆえに蛇は、不死の生き物と考えられるようになった。
・牙と毒の表わすもの
龍という生き物の能力の一つに、“吐く”というものがある。それは毒であったり水であったり、炎であったりもする。この力はやはり毒牙から連想されたものだろう。そして古代の人々にとって、水辺に棲むこの毒牙というのは、間違いなく脅威であったのはずだ。
※3しかし蛇の毒とは、正確には牙から出るものではなく、毒腺という場所に溜まっている。(それゆえ、牙を取っても蛇が無毒な生き物になるわけではない)牙を抜くと、その毒腺に溜まっていた毒が飛び出し、その毒が人を殺して文明を脅かすということもある。それを見た古代の人々は、蛇の毒は“吐かれるもの”であると考え、それが龍の“吐く”という能力に繋がったものと思われる。信仰とは恐れの向こうに願いを提示するものであると考えた時、このような“吐く”という蛇特有の武器が人々に畏怖と畏敬を与えたのは間違いなく、蛇信仰を誕生させる大きな理由であったと考える。蛇自身にとっての、力の象徴ともいえるだろう。
・“不死”の幻想の表わすもの
蛇を信仰する人々の中には、蛇に対する多くの幻想が秘められている。“不死”も、その一つである。
前述したが、人が蛇への“不死”を感じたのは、古代の人々がその脱皮する生態を見て感じたものであろう。そして“不死”というものには、生命にまつわるキーワードが多く潜んでおり、それを象徴する遺物は世界のあらゆる所から発見されている。
例えばウロボロスなどがもっともわかりやすい象徴である。「尾を飲み込む蛇」であるこの象徴は“終りのないもの”、“不老不死”、“死と再生”を表わし、それを繰り返して行く姿に、始まりも終りもない“無限”と“完全”の円の世界を見いだした。
ウロボロス様は中国の新石器時代(紀元前四七〇〇~二九〇〇年)から見つかっている。(これは“豚のような頭と蛇の胴体”をもった生き物が自らの尾をくわえている姿を描いたものであり、※4これが終りのないもの=不死である“龍”の原型であるとも考えられている)それほど蛇という生き物は、太古から人類に強い印象を与えていたということだろう。
また脱皮以外にも、二匹の蛇が全身を縄のように絡ませる交尾の姿なども、連鎖して行く“生命”を喚起させる大きな要素の一つになっていただろう。これは日本でもその姿を模した注連縄などに残し、現代でもそれが残影として残っている。
長い胴体と、繰り返す脱皮。蛇が“不死”であると信じられるようになり、その信仰が盛んになったのは、一重にその人間とはかけ離れた、異質の生態と身体性からであろう。
蛇信仰は後に、キリスト教など唯一神信仰や主神信仰が台頭することによって、その勢いは次第に失われて行くが、それでもかつて多くの人々がその蛇身を地母神として崇拝していたことは、古代メソポタミアのティアマトや古代中国の女堝の信仰、その他世界各国で見つかっている蛇をモチーフにした遺物を見て行けば、それは紛れもない事実である。原始の時代から“生命”の象徴として、蛇はその揺るぎない地位を得たのである。
不死であるという意味合いにおいて、その地母神が豊穣の象徴というのも、その生命力の延長から連想されたものだろう。
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【二】がやたら長いので、今月はここまでで。続きは来月に。
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